【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回は大ヒット中のアニメ映画『名探偵コナン ゼロの執行人』をピックアップ。本作は劇場版のコナンシリーズ22作目だそうですが、私は初めて鑑賞しました。公開してから6週連続1位! オトナもハマる『名探偵コナン』の魅力とは? ネットで話題の100億の男とは? というわけで見てきました。

【物語】

東京サミット開催地「エッジ・オブ・オーシャン」で爆破事件が発生。現場に残った指紋から、かつて警視庁にいた毛利小五郎が捕えられます。父の逮捕に娘の蘭は大ショック。江戸川コナンは、その爆破現場の映像にチラッと映った人物を見逃しませんでした。その名は安室透……。

コナンは、小五郎の罪をはらすために動き出します。しかし、そのとき東京で同時多発的にテロが発生するのです。

【初心者への配慮?名探偵コナンのプロフィール紹介】

すでに22作目という本作。初めて見る私でもわかるのかなと思ったら、冒頭で「名探偵コナン」誕生の由来を説明してくれます。高校生だった工藤新一が毒を盛られて子供の姿になり、江戸川コナンと名乗って犯人の「黒の組織」を追っている……という、ファンにはおなじみのエピソードもしっかり紹介。初見のオトナにも優しい配慮ですね。

【ストーリーは複雑……人物相関図くださ~い!】

しかし、コナンくんのプロフィールがわかっても、ストーリー&人間関係は意外と複雑でした。爆破事件やテロには、警察庁、警視庁、検察庁という3つの組織が深く関わり、容疑者となった小五郎の関係者もからんでいきます。

加えて本作の鍵を握る「安室透」は私立探偵であり、警視庁の秘密組織に属する「降谷零」であり、探り屋の「バーボン」でありと3つの顔を持つ男なんですよ~。

警視庁などの説明は映画でされるものの、その他の人間関係は、シリーズを通して見ている人しかわからないかも。この映画は、多少予習してから見た方がいいかもしれません。

【本格推理とアクションのミックスに大興奮】

複雑な設定には頭が混乱しましたが、本作の良さは、大スクリーンで見ることを意識して作られていることです。真犯人とその動機を事件の核にしつつ、そこから展開される物語がどんどんスケールアップしていくのです。

サミット会場の爆破 → 同時多発テロ→サイバーテロ→無人探査機「はくちょう」が都内落下の危機!と、息を忘れるほど次から次へと事件が起こり、コナンくんはそのたびに謎解きを展開しつつ、アクションにも参加。頭も体もフル稼働です。

そして謎めいた男・安室が、最終的にコナンとバディのように大活躍。ガンガンぶっ飛ばすカーアクションは安室、最大の見せ場。映画『ワイルド・スピード』を髣髴させるカーテクニックで大興奮させてくれます。

【イケメン男性キャラが女性ファンをガシッと掴んでいる】

実は本作の大ヒットの要因のひとつは、3つの顔を持つ安室なんですね。彼は女性ファンが多く、レビューでも「安室ファンにオススメ」「安室さんがかっこいい!」という声がけっこうありました。

後半、安室が命懸けのアクションをしようとするときに、コナンくんは安室にこんなことを聞きます。「安室さんって彼女いるの?」この質問は「安室ファンが知りたいのはコレでしょ」という製作陣から安室ファンに向けたサービスではないかと。また、それに対する安室の答えが……。コナン初心者の私には「ん?」って感じだったのですが、ファンは「そうよねえ」「よかったあ」とホッと胸をなでおろすでしょう。

【新作は2019年GW公開!】

映画『名探偵コナン ゼロの執行人』は、動員580万人、興収75億円を突破しました(2018年5月29日時点 / 興行通信社調べ)。この大人気シリーズを終わらせるわけはなく、映画のエンドロールで「新作は2019年GW公開」と発表。その映像に登場したのは、コナンくんではなく怪盗キッド。これまた女性ファンが多いキャラだそうです。

劇場には大人女性が多く、意外にも『名探偵コナン』シリーズを支えるのは、女性ファンだったのかもしれないなあと思いました。

執筆=斎藤香 (c)Pouch

名探偵コナン ゼロの執行人
原作;青山剛昌
監督:立川譲
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、古谷徹、上戸彩、橘境子、博多大吉、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、林原めぐみほか
(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会