はじめてスターバックスのコーヒーを買うようになった頃、「ショートサイズ」だの「黄色いランプの下でお待ちください」だの、いままで出会ったことのないスタバ用語にドキドキしませんでしたか?

それが今ではすっかり慣れちゃって、注文が終わったらさっさと受け渡しカウンターへ移動する私。商品ができたらレシート片手にさっそうと受け取りに行き、肩で風を切って店を後にする勢いです。スタバって、なんでか常連風吹かせたくなりますよね。え、ならない?

いやいや、ところが。アメリカで立ち寄ったスターバックスでは、そうは行きませんでした。日本のスターバックスでは1度も経験したことのないステップを踏まなければ、コーヒーを注文できなかったからです。

【アメリカのスタバでは◯◯を聞かれる】

旅の途中でほんの少し「慣れ親しんだ味」が恋しくなったとき。世界中で同じ味、同じクオリティのコーヒーを提供しているスターバックスはありがた〜い存在。

1日中歩き回って疲れた日に、ど〜〜〜〜してもスタバのコーヒーが飲みたくなり、ついに足を踏み入れました。

台湾のスターバックスには何度か行ったことがあり、基本的なラテなら世界共通のはずだと安心しきって、ショートサイズのラテとチョコチップクッキーを注文しました。すると、店員さんに思いもよらない質問をされたのです。

Your name?

……んっ???  君の名は。唐突にRADWIMPSのあの曲が頭の中でなり始めます。なんだなんだ。私が日本人だからか? いやいや、そんなわけない。名前だ。名前を聞かれている……。

やや動揺しつつも、とりあえずフルネームで返答。するとそれに対しては店員さんから特にコメントもなく、何事もなかったかのように合計金額を提示されたので、そのままお会計を済ませました。

【あれ、レシートもらってないぞ】

なんだったんだろう、と思いつつ席に戻ったのですが、そこでふと気づいたのです。レシートをもらっていないことに。

日本のスタバでは会計後に必ずレシートを渡されますよね。混雑時など、商品を受け取る際にレシートを見せて確認することがあったような気がします。

ところがどうやら、アメリカのスタバではレシートは渡さないのが普通のようなのです。そういえば、ほかのお店でも、「レシートは必要?」と聞かれることが多かったなあ、と思い出していたところ……。

ムリ〜モット〜!

店内に響き渡る、店員さんの声。……これは。もしや。

ムリモット〜!

ああ、うん、間違いない。そんな名前のアメリカ人は、おそらくこの店内にはいない

商品に受け取りに行くと、カップに貼られたシールには「Mruimoto」という、辛うじて読めそうな読めなさそうな、不思議なつづりで私の名前が書かれていました。

そうか、このために名前を聞かれてたのか……てゆうか、これフルネーム答える必要まったくなかったやつだわ。

【あなたの名前で呼ばれます】

そう、アメリカのスターバックスでは注文した商品ができあがるとあなたの名前が呼ばれるのです!

たしかに店内では「デイビッド〜!」とか「アイリーン!」とか、ちょいちょい名前を呼びかけているのが聞こえてはいました。ですが、それがまさか、すべてのお客さんに適用されているとは。

驚きと、新しい体験の面白さに「ニューヨークっぽい!」と興奮しつつ、もしコーヒーを待っているデイビッドが3人居たらどうするんだろ? という素朴な疑問も湧き上がりました。残念ながら、名前かぶりの場面には出会えなかったんですけども。

【お店の対応ひとつにも文化が表れる】

それにしても、こういった違いはやっぱりその国ならでは文化の表れだなあ、という気がします。

敬称を使わずに名前で呼び合うのが当たり前だからこそ、成り立つシステムですもんね。日本だと、店頭で初対面のお客さんを下の名前で呼び捨てにすること自体、そもそもありえないだろうし。

そういう「ちょっとした文化の差」を実際に体験して知ることができるのが旅の醍醐味だよなあ、というお話でした。ムリモット、面白かったです!!

撮影・執筆=森本マリ (c)Pouch

▼カナダにて、友人のレシート。MIKLY。完全に聞き間違いだけど、カッコいい。