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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは「桐島、部活やめるってよ」の原作者として知られる、朝井リョウの直木賞受賞作の映画化となる『何者』(2016年10月15日公開)です。

メインキャストは人気と実力を兼ね備えた若手演技派、監督は『愛の渦』でセックスで結ばれる人間関係を描いた実力派の三浦大輔。

彼らが朝井リョウ氏の原作をどう魅せてくれるのかと思ったら、原作を読んだとき以上に、心深くえぐられる作品になりました。就活中の若者たちの真実を切り取った本作をじっくりご紹介いたします。

【物語】

大学の演劇サークルに青春を懸けていた拓人(佐藤健)、拓人が片思いしている瑞月(有村架純)、瑞月の元カレで、拓人とルームシェアしている光太郎(菅田将暉)、瑞月の友達の理香(二階堂ふみ)、理香と同棲中の隆良(岡田将生)。

「就活はしない」と宣言する隆良以外の4人は就活の真っ最中。拓人と理香は偶然同じマンションに住んでいたことから、彼らは理香の部屋を「就活対策本部」とし、情報交換のために、ときどき集まるようになります。
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表向きは明るく交流しているように見える4人。でも、本音は違った。
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光太郎と瑞月は、それぞれ拓人と二人になると、“意識高い系”の理香や、就職はしない宣言をした隆良について、本音を語りだすのですが……。
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【就活経験者も、未経験者も、共に心をエグられる】

原作の小説『何者』では、若者たちが表向きの顔とは別の一面を見せるSNS投稿文などを駆使して、彼らの表と裏を就活を通して綴っているのですが、この映画でもSNSから飛び出す言葉が重要なキーワードに。

拡散される情報はありがたいものもある一面、表立った言えないことをSNSに忍ばせる人も多く、それらは大抵マイナスな要素をはらんでいます。
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人間だれしも表と裏があるけれど、裏の闇は理性で抑えていたり、時間が解決したり、乗り越えてきたりしていたのに、SNSが登場してからは「ここに吐き出せばいいじゃん」という具合に、便利な道具を使って気軽に扱われるものになったような感があります。
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映画『何者』の若者たちもそう。拓人などスマホ依存症ではないかと思うほど手放せなくなっており、そのあたりの描写は今の時代と合致します。

見る人によっては「これ、ワタシの話?」と思い、後半、明らかになる彼らの本音を聞けば聞くほど、心がエグられるかも。痛いところ突かれた~! と感じる人が多いことでしょう。
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【役作りで就活に臨んだキャストたち】

そんなリアルな描写は、すべて劇団ポツドール主宰の三浦監督の演出力。映画のクランクイン前に、キャストはリアルな就活体験をしています。エントリーシートを書いて、筆記試験を受け、面接やグループディスカッションも経験したそう。全員、役者としてのオーデョションは何度も体験しているものの、就活は初めてだったようで、口ぐちに「難しい」と言っていたそうです。
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また舞台の演出も手掛ける三浦監督ならではの、舞台稽古のようなリハも行われ、キャストたちは撮影に入ったあとも「ずっと舞台稽古しているようだった」と口を揃えて語っていたとか。

就活を通じて、登場人物たちの心が追い詰められていく物語の中、役者さんたちもまた、三浦監督の何度も繰り返される厳しい演出に追い詰められた様子。だからこそ、この映画は人間心理が実に濃厚で、それぞれのキャラクターが立つ映画になったのでしょう。
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【就活という名の迷路から出られない?】

作中には「就活が得意か、そうじゃないか」というようなセリフがあるのですが、結局、就活とは、個人の特性に関わる部分が欠かせないのでしょう。受験では勉強してきた成果が問われ、頑張れば頑張るほど良い結果を出せる可能性が高いかもしれません。

けれども、就活ではそうはいかないもの。こうすれば必ずイケるという必勝法がないからこそ、拓人たちは出口が見つからなくて苦しんでいるのです。

就活はまるで迷路のよう。でもその就活迷路から出ても、また新たな人生迷路は始まるのです。まさに今、就活をしている方ががこの映画を見ると「え~、しんどい~」と思うかもしれない。

けれども、これも人生の一部分! 映画『何者』を見て人間の闇を見ると、自分を振り返ることができます。そして、自分の中の膿のような部分を出すことができるかも……そんな見方もできる怪作です。

執筆=斎藤 香 (C) Pouch

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『何者』
(2016年10月15日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー)
監督:三浦大輔
出演:佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之ほか
(C)2016 映画「何者」製作委員会

▼映画『何者』予告編