【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは高橋一生と蒼井優が共演するラブストーリー『ロマンスドール』(2020年1月24日公開)です。タナダユキ監督が自身の同名小説を映画化。

ラブドール制作者とモデルのラブストーリーなのですが、高橋×蒼井の相性が抜群で、とても素敵なお話だったんですよ~! というわけで物語から。

【物語】

美大の彫刻科出身の哲雄(高橋一生)は、ラブドール制作工場の「久保田商会」で働くことに。先輩の相川(きたろう)の指導のもと、哲雄は、ラブドール作りにのめりこんでいきます。ある日、女性の乳房を型取りしようと、工場にモデルを呼ぶことに。

そこにやってきたのは美術モデルの園子(蒼井優)。哲雄は園子に一目ぼれをし、二人はお付き合いからとんとん拍子に結婚へと進んでいきます。しかし、哲雄と園子、それぞれ相手に言い出せずに隠していることがありました。

【2020年最高のラブストーリー!】

個人的にはめちゃくちゃ良かったです!2020年始まったばかりだけど、ラブストーリーとしてトップ3に入ってくると思いました。ラブドール職人とそのモデルの恋愛物語は、とても素直でストレート。告白して、付き合って、結婚して~というシンプルな展開なのですが、人の気持ちは時の流れとともに変化していく。ただ好きだから一緒にいたいという関係から、夫婦になったとき、恋愛と夫婦の愛情のバランスが難しくなり、恋のドキドキは薄れていくんですね。

哲雄の帰りを食事を作って待っている園子。その行為を「重い」と感じるようになる哲雄。でも園子が彼を待っているのには理由があり、それが明らかになったとき、哲雄はものすごく自分を恥じる……。

そういう夫婦のちょっとしたすれ違いの描き方がうまく、夫婦の関係性の行方から目が離せなくなるんです。高橋さんと蒼井さんも好演で、2020年の映画のベストカップルに選びたいほどお似合いです。

【タナダ監督が描く美しいベッドシーン】

タナダ監督は、哲雄と園子のベッドシーンにも目を背けずに真正面から描き切っています。男性目線のベッドシーンとは違って、愛し合う二人を美しく描くことに力を注いでいる感じがあります。タナダ監督自身、ベッドシーンは「美しく撮る」ことを意識していたそう。

「生殖行為は、動物的にみれば種を存続させる行為ですが、哲雄と園子の向かう先はそれとは違うので、だからこそ美しさを引き出せるように試行錯誤しました」

とタナダ監督。訳あって、子作りとは違った思いで求め合う二人。高橋一生さんと蒼井優さんのヴィジュアルの相性も良いし、どこか切なさも感じるベッドシーンは強く印象に残ります。

【久保田商会のスタッフが最高過ぎる!】

主演の二人に負けずに魅力的なのが、ラブドール工場・久保田商会の人々。哲雄と園子と久保田商会の人たちとの交流がとても暖かくて素敵なんです! ラブドール工場と聞くと、アダルドグッズだし、最初は怪しげな様子を想像しましたが、実にプロフェッショナルな職場で、スタッフのプロ意識は高い。と同時に、社員同士の仲が良く、人情も感じさせて、そのバランスが実に気持ちよいんです!

哲雄を指導する相川を演じる、きたろうさんの可愛いおじさんぶり、哲雄にさまざまな挑戦をさせる社長を演じるピエール瀧さんのユーモア、工場のお母さん的存在を演じる渡辺えりさんの暖かさ。彼らのユニークな存在感が、映画『ロマンスドール』を明るく照らし、哲雄と園子の愛を見守っている……。そこにホっとしました。

映画『ロマンスドール』はデート映画にオススメ! 哲雄と園子の等身大の夫婦像は、男性は哲雄、女性は園子の気持ちにどこか心通わせることがあるのでは? 映画を観終わったらいろいろ語りたくなる映画ともいえるでしょう。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

ロマンスドール
(2020年1月24日より、全国ロードショー)
監督・脚本:タナダユキ
出演:高橋一生、蒼井優、浜野謙太、三浦透子、大倉孝ニ、ピエール瀧、渡辺えり、きたろう
(c)2019「ロマンスドール」製作委員会