【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、女子アカペラグループの青春を描く人気シリーズの最終章『ピッチ・パーフェクト ラストステージ』(2018年10月19日公開)です。

第1作目で大学生だった女子アカペラ部「ベラーズ」のメンバーは、みんな社会人になりましたが、本作で再結成、いえ~い! というわけで、女子パワー炸裂の本作を試写で鑑賞しました。やっぱり楽しかった! シリーズ3作の中で本作がいちばん好きかも! では物語からいってみましょう。

【物語】

NYで音楽プロデューサーとして働くベッカ(アナ・ケンドリック)、ブロードウェイを目指すファット・エイミー(レベル・ウィルソン)、獣医を目指すクロエ(ブリタニー・スノウ)など、元ベラーズのメンバーは大学卒業後、それぞれの道を歩みます。しかし、あまりうまくいっていない様子。そんなとき、オーブリー(アンナ・キャンプ)の提案で、米軍慰問団のイベントにベラーズとして参加することになったのです。張り切るメンバーですが、コトはそう簡単に進まず……。

【ベラーズの歌声に胸が熱くなる~!】

ベラーズが帰ってきた~! 社会人になったはいいけど、壁にぶつかりモヤモヤしていた彼女たちは、起死回生とばかりにベラーズを再結成。

イベントでDJキャレドに認められれば、ツアーの前座を務めるアーティストに抜擢されるチャンスも得られると、メンバーはノリノリで歌って踊ります。やっぱりベラーズの歌声はいい! ブリトニー・スピアーズ「TOXIC」、DNCE「Cake By The Ocean」などダンスミュージックが本当に楽しく、ハーモニーも素晴らしくて「コレだよ、これ!」と魅力再確認。普段のハチャメチャなノリと洗練されたステージのギャップが最高なのです。

【人生の壁をぶち壊してくれるのは、やっぱり歌!】

本作はドラマ部分も本当によくできています。社会人になって数年たつと、理想通りにいっていないと焦ったり、自分が成長しているのかわからず悩んだりしますよね。彼女たちも同じです。

ベッカは二流アーティストのプロデュース業ばかりでクサクサしていたし、他のメンバーもそれぞれが壁にぶつかり、モヤモヤ……。しかし、彼女たちの場合、その壁を壊してくれるのが歌。もう1度ベラーズとして活躍して、生きている実感を得よう! とするわけです。

【ファット・エイミーが大活躍!】

ベラーズご一行様は、米軍慰問団のイベントに参加するためスペインへ。しかし、今度はそこでライバルバンドとバッチバチの音楽バトルになるのです。アカペラのベラーズとロックバンドじゃ、比べようがないと思うんだけど、バンドは音のボリュームで圧倒。美声で勝負する彼女たちは劣勢に~。

その一方、ファット・エイミーは疎遠だった父(ジョン・リスゴー)と再会。感動の父娘エピソードかと思ったら、これが「そうだったの!?」という驚きの展開に発展していきます。ちなみに本作はファット・エイミーがシリーズでいちばん活躍する作品かも。ベラーズの下ネタ担当の彼女ですが、大人になりました。本作では下ネタを控えめに、あのポッチャリボディを武器にアクションに挑戦!笑いの女神として大いに盛り上げてくれます。

【友情と成功、どちらを選ぶかベッカの苦悩】

『ピッチ・パーフェクト』は第一作目から、ベッカの音楽的センスを称えてきましたが、彼女は個人的に大きな成功を手に入れるところまでは至っていません。しかし、本作では、成功を得るチャンスがベッカに与えられます。でもそれはベラーズの仲間たちとの友情にひびが入るかもしれない危険もはらんでいたのです。

ベッカが決断に迷う姿を見て、一緒に悩んじゃいましたよ。「自分だったら、どうするだろう」と。働く女子は彼女の気持ちに心を重ね合わせてしまいそう。彼女がどんな決断をしたのかは映画を見ていただいたいのですが、本当に鮮やかな最終章! でも、もうベラーズに会えないのは寂しいから、番外編とか制作してほしいくらいです。

本作は女子同士で見ることをオススメ。ノリノリの楽しさとさわやかな感動をお約束します!

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

ピッチ・パーフェクト ラストステージ
(2018年10月19日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:トリッシュ・シー
出演:アナ・ケンドリック、レベル・ウィルソン、ヘイリー・スタインフェルド、ブリタニー・スノウ、アンナ・キャンプ、ジョン・リスゴー、DJキャレド、ハナ・マエ・リー、アレクシス・ナップ、クリッシー・フィット、エスター・ディーン、エリザベス・バンクス

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Quantrell D.Colbert/© Universal Pictures