【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのはディズニー/ピクサーの最新作『インクレディブル・ファミリー』(2018年8月1日公開)です。前作『Mr.インクレディブル』(2004年)の14年後に登場した続編。映画界では「パート2はパート1よりもつまらなくなる」と言われることが多いのですが、本作はその定説を覆し、確実にパート1よりも面白くなっています! 個人的には2018年度公開作ベスト10に必ず入る傑作だと思いました。では、物語からいってみましょう!

【物語】

街の平和を守ってきたスーパーヒーロー、ボブの一家。しかし、悪との闘いで街は破壊され、ボブと家族はスーパーヒーローの活動をストップされてしまい、意気消沈……。

そんなある日、「スーパーヒーローが世界を救う」と、ボブの妻ヘレンに復活のミッションを依頼してきた人物がいました。妻のヘレンは、はりきってヒーロー活動に復帰! 一方ボブは、ヘレンにかわって家事育児を担当することになるのですが……思春期のヴァイオレットは気難しく、赤ちゃんのジャック・ジャックは、突然、特殊能力を発動し、ボブは大いに振り回されてしまうのです。

【妻は働き、夫は専業主夫に!いまどきファミリーの登場】

大ヒットした前作『Mr.インクレディブル』の続編が、ついに公開! 本作の主役は、ママのヘレン! ヘレンが外でスーパーヒーロー活動、パパのボブは専業主夫として家事育児という、現代の夫婦の在り方を示した本作。

怪力ヒーローとして優秀なボブだけど、専業主夫としては優秀とは言えず、彼は、家事をしながらの育児がいかに大変かを知るのです。

【スーパーヒーロー活動の方が育児よりラク?】

家事育児で睡眠時間が削られ、目の下のクマができ、ヘロヘロになっていくボブ。本作は、ジャック・ジャックの特殊能力を使って、赤ちゃんの予測不可能な行動をデフォルメして描いていますが、実際、赤ちゃんや幼児の行動は予測できず、目が離せないのは事実です。

またヴァイオレットの恋愛の悩みに口を挟んで「パパは女の子の気持ちをわかっていない!」と怒らせてしまうなど、いろんなことに目配りしながら行動しないといけないワンオペ育児の大変さをリアルに描いています。それを妻ではなく、夫が体験して悩みまくるところがいいですね! とても現代的だと思いました。

【ヘレンのピンチに家族で立ち向かう姿が胸アツ!】

一方ヘレンは、ゴムのように伸びる体を駆使して、事故を未然に防いだりして大活躍! 人々に感謝され「スーパーヒーローを復活させる」という、巷の動きを促進させる立役者となっていきます。しかし、彼女はスーパーヒーローとして注目を浴びても、その状況に浮かれず、常に家族のことを気遣っています。そこがヘレンの魅力!

だから、どんなに忙しくても、夫婦や家族の関係が崩れることはなく、ラスボスが登場して、ヘレンが大ピンチに陥ったとき、家族が一丸となって力を発揮できたのでしょう。ヘレン像には、ブラッド・バード監督の女性への尊敬の念が含まれている気がしました。

【日本語吹替え版で見ても楽しい!】

もちろんヴィジュアルも最高。世界観は衣裳も含めて、ミッドセンチェリーのイメージで描かれており、ピクサーアニメならではの色彩の美しさを際立たせています。またヘレンの後ろ姿がよく映し出されるのですが、ヒップがセクシーなんですよねえ。本作は、ピクサーアニメの中でもモダンでクールな映像がとてもかっこいいです。

そうそう、私は日本語吹替え版で見たのですが、これが良かった! 三浦友和さん(ボブ)、黒木瞳さん(ヘレン)、綾瀬はるかさん(ヴァイオレット)は前作から引き続いて出演しており、加えて、本作では、スーパーヒーロー仲間として、小島瑠璃子さん(ヴォイド)とサンシャイン池崎さん(ヘレクトリクス)が、声の出演をしています。皆さん素晴らしくて違和感ゼロ!

デートで見てもよし、女子同士で見てもよし、甥っ子姪っ子を連れて見てもよし!『インクレディブル・ファミリー』は超オススメ!この夏必見ですよ!

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

『インクレディブル・ファミリー』
(2018年8月1日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:ブラッド・バード
声の出演:クレイグ・T・ネルソン 、ホリー・ハンター、サラ・ヴォーウェル、ハック・ミルナー、サミュエル・L・ジャクソン、ブラッド・バード、ソフィア・ブッシュ、イーライ・フチーレ、ジョン・ラッツェンバーガーほか
(日本語吹替え版:三浦友和、黒木瞳、綾瀬はるか、高田延彦、山崎智史、小島瑠璃子、サンシャイン池崎ほか)

(c)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

▼家事! 育児! 世界の危機! を同時にあらわすなんて…ディズニーてスゴイ!